新年あけましておめでとうございます。

東京窓景東京窓景
中野 正貴

河出書房新社 2000-11-15
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今年最初は中野正貴の『東京窓景』。表示では2000年となっているが、これは2004年の間違いである。
誰一人いない都心を写した『TOKYO NOBODY』、香港の煌めく夜を撮った『SHADOWS』に続く本作品は、私見では一番成功している作品ではないかと思う。六本木ヒルズや東京タワー、都庁、渋谷のスクランブル交差点といった東京のランドマークを窓枠の写った風景として、ある種の生活空間を通した風景として提示されている。窓枠がなければ、単なる名所を写した写真になってしまうだろう。しかし、東京タワーやアサヒビールの本社の写った写真を見ても分かるように、確かに居住空間を通して撮影されたのだが、まさに目の前にドーンと建物が現れ、遠近感を失ってしまいそうな風景が、果たして「日常」生活的なのかと困惑してしまう。居住空間とランドマークが並立することがある種のシュルレアリスム的効果を産み出していると言えなくもない。居住空間とランドマークとの乖離。ランドマークとは一体何なのか。どの土地を表しているのか。ランドマークも地面に根を生やしている。だが、一方で浮遊してもいる。街を歩いていると、ビルの間からひょっこり顔を覗かせる東京タワー、六本木ヒルズ、都庁……。ランドマークは神出鬼没なのである。居住空間を捨象したランドマークのイメージ。それが現在の東京である。