逃げ去るイメージアンリ・カルティエ=ブレッソン逃げ去るイメージアンリ・カルティエ=ブレッソン
楠本 亜紀

スカイドア 2001-02
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この著作は、カルティエブレッソンの、一見するとバルトの言う「ストゥディウム」に満ち溢れた作品において、それを破壊するようなブレやぼけに注目することで、従来のカルティエブレッソン受容に一石を投じるものとなっている。著者はバルトやヴェンヤミン、クラウスの議論を持ち出して、それを説明しようとしているが、特にクラウスの「差異の効果」「遅延の効果」をそれぞれ「ぼけ」「ぶれ」に当てはめて議論しているのはかなり無理があるように思われる。クラウスがここで言っている効果は、オリジナルとシュミラークルという二つの関係性においてであり、ぼけやぶれにはそうした対象は存在しない。前半部分は、決定的瞬間におけるフォームの問題を実際の写真を詳細に分析していて、非常に面白かったが、後半部分はそれに対して、議論の精密さに欠けている印象を受ける。
カルティエブレッソンの灰色」というのは初めて聞いたが、この著作を先に読んでいれば、写真集を見たときに検証できたのになあ。また借りるのがめんどくさい泣。