日本―マイケル・ケンナ写真集日本―マイケル・ケンナ写真集
マイケル・ケンナ

エディシオン・トレヴィル 2003-02
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マイケル・ケンナの写真集。まず特筆すべきは、モノクロのトーンの扱いの素晴らしさである。黒のしまり具合がよいので、中間色もその場の雰囲気をうまく伝えることができている。「茫洋とした」日本の姿がそこにある。ただただ広い。日本とはこんなに広いものだったのかと。その広さを伝える手段としてトーン以外にも、微妙に写真のサイズを変えていて(5mm程度しか違わないものまである)、それが不思議に写真集にリズムを生み出している。飯沢が序文で、マイケル・ケンナの写真に対して「小ささ」を特徴に挙げているのも、この「広さ」と密接に関わっているように思われる。広さと小ささは相対的な問題である。
日本という国にこのような「フォルム」があるということが、私にとって一つの大きな発見となった。つくづく写真とは飽きさせないものである。日本に対するイメージ(心象)を写真というイメージ(画像)によって書き換える、ウロボロスのごときイメージの不断の更新。"I have seen it all"と言う前に、今一度眼を凝らしてみてください。