BunMay2005-06-12





Trans-figurations

・作者: ヴェルーシュカ
・出版社/メーカー: リブロポート
・発売日: 1987
ヴェルーシュカの作品。ソンタグが序文を書いているということで、知っている人もいるかもしれない。また、谷川渥の『表象の迷宮』の裏表紙に写真が載っているので、それで見たことがある人もいるかもしれない。「ヴェルーシュカ」はヴェラ・レーンドルフがモデル時代に名乗った名前だが、ホルガー・トルシュ(写真家、画家)との共同作業で本格的にアートの領域へと踏み込んでいくことになる。彼女(と彼)の写真は、ボディ・ペインティングというまさに手による長時間の作業と、写真という超短時間の作業の弁証法的方法によって生み出されてきた稀有な作品である。
彼女の作品を初めて知ったのは、TH series(トーキングヘッズ叢書)No.18『身体★表現主義 〜ゲルマニックな身体のリアル。』を読んだときであるが、真っ先に写真集を探しに神田に行ったのをよく覚えている(そのときは6000円近くして断念したが、つい先日銀座にて1000円で買うことができた)。「錆び」のシリーズは皮膚に描かれる錆が忠実すぎるほど忠実に細部にわたって再現されており、職人的手業が写真の細部を擬装している。また、絵画における細部と写真における細部との戦いをもここでシミュレートしており、いわば入れ子状態(微細な手業を微細に写す)になっているといえよう。
しかし、これだけではこの写真の異様なまでに人を惹きつける力を説明しきれていないように思われる。(背景と同化するという意味で)透明でありながら、その体の物質性(絵の具も含む)が否応無く感じられてしまう、その不可思議さ、その異常さ、そのエロティックさ・・・。