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藤井 保

リトルモア 2005-04
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藤井保の写真集。灯を持った人物が水辺、砂丘、草原、雪原、樹海・・・にポツンと立っている。離れれば離れるほど、灯はそれを照らす人物と同じ大きさになり、ついには完全に覆ってしまう。手に持つ灯は上にかざすでもなく、前に押し出すでもなく、腰の位置に置いたままにある。そこに立つ人物は何を思いながら立っているのだろう。自分の位置を指し示そうとしてはいないし、逆に誰か何かを探しているわけでもない。
フロリダの国立公園で撮られた見開きの写真は、水面に反射する灯が手に持っている灯よりも何倍もの光量を放っている。それとは逆に、同じフロリダの国立公園で撮られた白黒の写真は、反射した灯がまるで蝋燭の火のように細長く縦に伸びている。実際に写っている人物と、水面に映っている人物。両者は全く別のことを考えているようである。
茫洋とした風景にキラリと光る灯。こうしたものに何かホッとするものを感じるのはなぜだろうか。不可触の自然に、人間の形跡があることに安心するのだろうか。私の名のように、文明化の形跡に。