今日は、池袋サンシャイン文化会館で行われたpage2013オープンイベント・日本写真保存センターセミナー「写真データベースの閲覧と検索」に参加。写真データベースにかんして、東京国立博物館朝日新聞社、日本写真保存センターの三つの実践が紹介されたが、その状況は三者三様でなかなか面白かった。
三つの実践の中で、悩みが最も少なさそうなのが東京国立博物館。ここのデータベースはどんな所蔵品があるかを示すことを目的としており、分類もジャンル、作者、制作年代等の従来の方法論で済む場合も多く、比較的シンプルに事が進んでいる印象を受けた。震災や戦災による消失で写真のなかにだけしか存在しない作品があったり、1872年の壬申検査時に撮影された文化財の写真そのものが重要文化財として収蔵品になったりと、博物館ならではの報告も興味深かった。
朝日新聞社の写真データベースは、社外公開用のものと社内閲覧用のものとがあり、前者は公益性(と販売収益性)を、後者は利便性を目的としている。データベースを構築する際に、報道機関として最も配慮しなければならないのが「事実」の確認だろう。フィルム時代の膨大な量の写真に付けられたキャプションが果たして正確なのかどうか、これを精査しなければならない。更に、フィルムに限らずデジタルであっても、イメージのマニピュレーション(トリミングひとつで印象ががらりと変わることもある)がどれほどなされているのかは気になるところ。過去に報道した内容を客観的に検証する(余地を作る)ことも、公益性のある写真データベースには必要なことだと思われる。分類にかんしては、おそらく社会面や文化面といった誌面上の分類に沿ったかたちで済むと思われるが、写真の内容についてどのように、どこまで記述すればよいのかということは悩ましい問題のひとつではないだろうか。もちろん、費用対効果もデータベース存続の根幹に関わる問題。
三つのなかで、悩みが最も多そうなのが日本写真保存センターであるように思われる。劣化や散逸が危ぶまれる写真原板の収集・保存を行いつつ、同時にアーカイブ化を進めていることもあり、分類法を最初から固定的に決めることが難しい状況にある。更に、プロアマ問わず写真原板を収集するということで、芸術作品としての写真だけでなくヴァナキュラー写真も視野に入れていることを示唆していると思われるが、写真家名から選択する現状の詳細検索が「作家性」を強調させてしまうことになりはしないか、気になるところである。そして、朝日新聞のデータベースと同様、写真の内容にかんする記述の問題がある。そして、費用の問題も。
多くの悩みを抱えている日本写真保存センターだが、ネガの保存はやはり重要な課題であると思われる。ジョルジュ・ディディ=ユベルマン著『イメージ、それでもなお アウシュヴィッツからもぎ取られた四枚の写真』のなかで、アウシュヴィッツの惨状を演出するために写真の改変が行われた事例を紹介しているが、ネガの保存はそうした写真の改変(特にプリント焼付時の改変)を客観的に検証するためのひとつの手立てにもなり得るのではないだろうか。