小平雅尋『ローレンツ氏の蝶』,Symmetry,2011年11月21日(手製本)


小平雅尋の『ローレンツ氏の蝶』に収められている写真は、平面化されることでフォルマリスティックな面白さが生じる写真であったり、日常のなかに不意に現れる奇妙な出会いを捉えた写真であったり、写真にしか捉えられないような光や炎の軌跡を写した写真であったりと、様々な関心事で撮られたであろう写真群となっている。どことなく、戦前の写真家(安井仲治や小石清など)を連想させるような写真も含まれている。何かひとつのテーマに沿った写真集ではないので、こうしたバラつきこそが表現の多様性としてメリットになり得る。もう少し多様性を見たい気もしたが、分量としてはこれがちょうど良いように思われる。


濱浦しゅうの写真集では、縦構図と横構図の写真が見開きで並んだ際のサイズの問題を指摘したが、小平の写真集では縦構図も横構図もどちらも同じサイズ(35?のフォーマットか?)でレイアウトされている(裁ち落としではないので、濱浦の写真集と比べて余白の部分が多い)。濱浦の写真集では、見開きの際にサイズに隔たりがあるためバランスを欠いた印象を受けたと述べた。では、小平の写真集はどうかというと、同じサイズにした分、見開きで縦構図と横構図の写真が並んでも、それほど違和感を感じることはなかった。ただ、もう一方で、余白の面積が多く、若干の小振り感が出てしまっているのは残念なところである。


同じサイズに統一したほうがいい時もあれば、しないほうがいい時もある。結論としては、作品全体のテーマ次第というところがある。今回の写真集で言えば、同サイズにしたことで効果的に感じられたことは、残念ながらあまり無かった。むしろ、写真から得る印象としては、裁ち落としがあったり、見開き2ページにまたがった横位置の写真があったりしたほうがより迫力ある写真集になったように感じられる。ただ、作家が意図的にトリミングをしないと決めているようにも思われるので、難しい問題ではある。