BunMay2005-01-09

ダイアン・アーバス作品集ダイアン・アーバス作品集
ダイアン アーバス Diane Arbus 伊藤 俊治

筑摩書房 1992-07
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今回はダイアン・アーバス。彼女の写真の第一の特徴は、6×6の正方形の画面であるということ。フリークスを撮っているということが全面に出ていて、あまり気付かないかもしれないが、これは重要である。我々が見慣れている写真は長方形のものが多いと思われるが、形状からも分かるように、そこには写真に縦と横が必然的に生じてくる。だが、正方形の写真には縦や横というものは存在しない(もちろん写真の内部に関しては縦横は存在するが)。そのため、長方形の写真は本の形状によって縦写真が大きくなったり、逆に横写真が大きくなったりするが、正方形の写真ではそのようなことは起こらず、画一的に並ぶことになる。そうすると、不思議にその写真集は正方形という形の魔力にとり憑かれたかのように全部「同じ」に見えてしまう。しかし、それは「異常者」と「正常者」を同質化、平等化するのではない。全てを「異常者」にしてしまうのだ。子どもがおもちゃの手榴弾を持っている写真があるが、その子供も異常者に見えるし、赤ちゃんの顔のクローズアップの写真もその赤ちゃんにどこか異常があるのではないかと勘繰る。事実がどうであるということは、この際関係がない。そして、写真を見ている自分も「異常者」を求めようとしている一人の異常者になっている。アーバスの写真は「我々」を挑発する。その「我々」とは自分をアーバスに撮られるような対象ではないと自信を持っている者であり、安全地帯にいると信じている者である。