ANGKOR

・ 作者: 宮本隆司
・ 出版社/メーカー: トレヴィル
・ 発売日: 1994/02

宮本隆司の作品。彼は他にも『九龍城砦』、『(新)建築の黙示録』などを出しており、今回取り上げるにあたってもどれにしようかかなり悩んだ。決め手になったのは、彼のカラーの色使いの独特さがちょうどアンコールという未知の領域にぴったり当てはまっているように感じたからである。特に、白の使い方が独特で、小学校の時に廊下に塗ったワックスのような色と形容してよいだろうか。この色が何とも言えず、アンコールの不思議さを醸し出している。その色で表されているのが木の根で、遺跡の壁面を侵食していくダイナミックさと神々しさを直接に伝えている。遺跡の崩壊した部分も写っているのだが、目が奪われるのはあまりにも巨大な樹木のほうである。
写真の後半のほうでは、遺跡の壁面を画面いっぱいに撮った写真があり、何となく眺めていると、突然そこに顔がにゅっと浮かび上がってきて、驚かされる。そして、その壁面に施された巨大な顔面に苔やら白い付着物やらが様々に付いていて、まるで化粧をしているようにも見える。それほど、表情が豊かに見えるのである。写真集の最後では、夕方から夜にかけて、ストロボ発光をして遺跡の外観の全体像を撮影しているが、それを見ていると何か海の中を見ているように感じ、建物なのか深海の岩なのか不思議な感覚に襲われる。
ただ、写真集の構成として、1ページずつに画面が分割されていて、見開きで迫力ある作品はなかったのは残念である。

宮本隆司関連サイト★
関心空間:ダンボールの家
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