森村泰昌 レンブラントの部屋森村泰昌 レンブラントの部屋
森村 泰昌

新潮社 1994-09
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森村泰昌(モリムラヤスマサ)の写真集。彼の写真を見て真っ先に思い出すのは、シンディ・シャーマンの作品。日本とアメリカで同じようなことが行なわれているのは興味深い。どちらも西洋絵画を素材にすることで、美術史の伝統に鋭く切れ込みを入れようとしている。しかし同じ西洋絵画を題材にしているとは言え、両者には決定的な違いがある。シャーマンとは違い、森村は早くからデジタル技術を用いて作品を制作している。特に「レンブラントの部屋」では、写真と油絵が混交(目の部分だけ写真という作品もある)しているものがほとんどである。これらの作品は、写真と絵画の境界を曖昧にする作品というよりは、写真とも絵画ともつかない何か「醜悪な」ものとして私の眼をまごつかせる。
単純な疑問として絵画や映画を題材にしたものはあるのに、写真の傑作と呼ばれるものを題材にした作品がないのはなぜかということがある。それは、写真に撮ってしまうと、単に(同一カテゴリーに属する)オリジナルとの優劣の問題になってしまうということなのだからであろうか。(映画や絵画は写真とは)他ジャンルであるという前提があるから、シャーマンや森村の写真は生きるのであろうか。自分自身の課題として、写真を題材にした写真を今考えているところである。