リー・ミラー写真集 -いのちのポートレイト-リー・ミラー写真集 -いのちのポートレイト-
リチャード カルヴォコレッシ リー ミラー 高田 ゆみ子

岩波書店 2003-11-15
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リー・ミラーの写真集。こういった類(芸術家のポートレイトや雑誌の広告写真を撮影する)の写真はあまり紹介してなかったので、今回取り上げてみた。リー・ミラーは最初『ヴォーグ』のファッションモデルを務めていたが、それからヨーロッパへの旅行の折にシュルレアリスムマン・レイに弟子入りし、写真家の第一歩を踏んだ。自身がモデルを勤めた『ヴォーグ』で今度は写真家として活動することとなる。第二次世界大戦が始まると従軍記者として戦地に赴き、戦場で働く女性や戦時下の民間人など撮影した。その中でも、ナチスドイツの兵(自殺した親衛隊など)を撮影した写真は、リー・ミラーのフォト・ジャーナリズムの力を示すものであるといえよう。
戦後は、雑誌の仕事やジャーナリズムの仕事から距離を置き、芸術家のポートレイトを中心に撮るようになる。こうしたポートレイトが無視できないのは、文字媒体としては残り辛い芸術家同士のコミュニティが写真という形で思わぬ個人間の関係を示すことがあるからである。こうした情報は、芸術家同士の影響関係を探るような研究の一つの証拠資料として機能することも十分あり得る。リー・ミラーの写真は、芸術的な価値、社会的な価値やドキュメントとしての価値などが幾重にも重なって、リー・ミラーという写真家の個性を構成している。