アメリカンズ―ロバート・フランク写真集アメリカンズ―ロバート・フランク写真集
Robert Frank 山形 浩生

JICC出版局 1993-11
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ロバート・フランクの写真集。タイトルにある通り、多種多様なアメリカ人が登場する。スーツでビシッときめた紳士から、眉を細い糸のように描いているオカマまで、眼に映るものすべてがアメリカを象徴しているようである。それは、白人の赤ちゃんを抱いている黒人女性(おそらく乳母なのであろう)というような取り合わせにも遭遇する。そして何よりも、アメリカの国中に広まっているもの、「国旗」がこの写真集の中で度々登場し、アメリカという国を象徴している。
写真集の冒頭の写真はアパートの窓に吊り下げられたアメリカ国旗から始まっている。更に縞々模様と星形が色々な場所に見え隠れしている。レストランの飾りつけのライトが星形をしていたり、ショーウィンドウに反射して映り込んでいる縞模様などなど。赤と白の国旗はモノクロ写真の中で黒と白に変化し、黒人と白人を隔てているようにも見える。ロバート・フランクの撮るアメリカは、しかし、そうした黒人―白人だけではなく、移民の姿もしっかりと捉えている。メキシコ系の移民か、あるいはヨーロッパからの移民か、黒か白かではないアメリカの姿がそこにはある。そして、国旗の黒(赤)―白の縞模様がきれいに分割されているように、黒人、白人そして移民もまたきれいに区画分けされていることを暴露している(例えば、バスの座席位置など)。国旗が象徴するのはネイサン・ライアンズが『After 9/11』で撮るような増殖する愛国心というものよりも、アメリカ国民が平等にアメリカという国を愛する心を持っているにも関わらず、アメリカという国がアメリカ国民を平等に愛する心を持っていないことを示すのである(今回のアメリカ南部を襲った巨大ハリケーンカトリーナの問題を見れば、今でもアクチュアルなものであることが分かるであろう)。