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彼女の写真に出てくる「生命の神秘さ儚さ」は手放しで感動できるものではない。というのも、どの誕生や死にも人工的な印象が付きまとうからである。イルカや海亀の写真は水族館で撮られたものであったり、いろいろな動物の誕生シーンに出てくる人の手であったり。この写真集を見たときに感じた違和感は、そもそも生命の神秘さや儚さはすべて人工的なのではないだろうか、という漠然としたもののような気がする。この思いをより強化するきっかけとなるのが、写真集の前半にある床一面に散らばる硝子の破片の写真である。この写真は写真集全体の雰囲気とは明らかにそぐわない「余剰物」であるように思われる。このコマまで写真集を読んできたその心の流れが、ここでぷつりと途切れるのである。というより我に返るとでも言うべきであろうか。硝子の儚さは生命の儚さとはだいぶ異なる。それは人工的に作られ、人工的に破壊されるのである。硝子に感じる儚さは経済的理由であって、生命に感じる儚さはそうした経済的理由とは違うところにあるはずである。この写真を川内はどのような意図で入れたのだろうか。それがどのようなものであれ、この硝子の破片の写真がこの写真集全体を左右しかねない非常に重要なコマであることは確かである。それが彼女の意向に沿うものであろうと、反するものであろうとも。