飛ぶ紙―ベルナール・フォコン写真集飛ぶ紙―ベルナール・フォコン写真集
ベルナール・フォコン

Parco出版 1986-07
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ベルナール・フォーコンの写真集。正方形の画面に数体のマネキン人形。そのマネキン人形はどれも若く、小学生くらいである。どの人形も男の子で、ホモ・ソーシャルな集団を描いている。幼少期の体験(?)あるいは夢想を繰り返し再現しているが、しかしそこには決定的に当時のものとは違うものが混入している。それは、作者自身のトラウマなり考え方なり、何にしろ現在の自分から見た「幼少期」である。彼は、それを隠そうとはしていない。彼の写真によく登場する炎は、その典型であろう。更に、男の子しか画面の中に存在していない事実が、フォーコンの現在を映し出しているように思われる。
フォーコンの写真の特徴として、人形を使っていること以外に「散乱している」印象がある。それは子どもの落ち着きのなさを表現しているのか、あるいは瞬間の強烈さを示しているか。いずれにしても「記憶」の凄まじさがその画面には濃縮されている。
また、正方形の画面はこの写真が非常に隅々にまで構成されていることを更に強化させる働きを持っているように思われる。その点で、ダイアン・アーバスの正方形の画面が持つ悪魔的な効果とは趣を異にしているが、どちらも別種の違和感を強烈に発している。
なぜ男の子の人形なのか?これは見る者にとっては気になるところであるが、例えばフォーコンに対してホモ・セクシャルや少年愛という判断を下す以外に、少年期の自分を思い出すと、男の子と遊ぶ、それも女の子を排除してまで男の子と遊ぶということに一つの快楽を見出していたと言えなくはないだろうか。ホモ・セクシャルではないが、ホモ・ソーシャルな場を積極的に構築していたとは言えないだろうか。「幼少期」というものをちょっとずらした視点で見てみると、実はかなりおかしなものに見えてくるのではないだろうか。