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この写真集は多重露光やモンタージュなどの新しい写真の表現形式が用いられている一方で、乾板を用いて撮影してもいる。8番目のクローズアップされた男性の顔の写真の中で目頭付近に銃弾が撃ち込まれたような穴が開いているのは、乾板に直に釘を刺したからである。しかし、その効果はフィルム状のネガでは決して表現し得ないものであり、毛穴まで見えてしまうような人間的質感とヒビが直線状に入るガラス特有の質感とが同時に一枚の写真の中にあり、なんともいえない居心地の悪いような、でもゾクゾクしてくるような感覚に襲われる。1930年代ならば、もうとっくの昔にロールフィルムは登場しており、乾板は時代遅れになっていたであろう。しかし、そうした時代遅れの乾板を用いながら、時代の最先端をいく多重露光やモンタージュという表現形式を具現化する、その最高到達地点が8番目の写真なのである。