After 9/11 (Yale University Art Gallery S.)After 9/11 (Yale University Art Gallery S.)
Marvin Bell Nathan Lyons

Yale Univ Pr 2003-09-01
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ネイサン・ライアンズの写真集。ネイサン・ライアンズの写真集に見られる国旗はロバート・フランクの「The Americans」に出てくる国旗の象徴とはまるで違う。この写真集は9.11以降のアメリカの増殖する国旗を写したものに他ならない。国旗という布だけに収まらず、グラフィティの中に現れたり、風船の模様として現れたり、洋服のデザインに使用されていたり、まさに町中、日用品中、生活中にアメリカ国旗が侵入している。国旗を見たら愛国心を燃やせと言わんばかりに、まるでパブロフの犬のようにアメリカ国旗に反応させようとしている。アメリカに住む人々をアメリカ国民にさせる強力な武器として、国旗は機能しているのである。
「God bless America」この言葉もまたアメリカ中に氾濫している。神はアメリカしか祝福しないのか。同時爆破テロという受難があり、「God bless America」という言葉が蔓延する。そして最終的にはアメリカが完全勝利するという、ハリウッドお得意のシナリオがもうすでにどこぞで書かれているのだろうか。受難→救済というどこかで聞いたことのあるような図式がアメリカ全土を支配している。
アメリカ国旗はアメリカ国民全員を平等に愛してはいないのに、強制的に愛国心を持たせようとしている。この図式は、数十年前にロバート・フランクが撮ったアメリカと大差ないのかもしれない。そのことが、この前の大型ハリケーンカトリーナの襲来で暴露されたように思われる。9.11以降の結束心には、いたるところにほころびが生じている。アメリカは遠くアジアの方しか見ていない。いつになれば、振り返るのだろうか。