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この写真集は一枚一枚が濃い青い裏地で二つ折りにされて、バインドされているという、少し珍しいタイプの写真集である。紙の質感といい、コントラストといい、「暗黒舞踏」という名称の中にもある「黒」を一層際だたせている。それが良く示されているのが8枚目以降の写真群である。その一つ前の7枚目の写真が画面の90%以上を空で占めており、非常に爽快な「白」を貴重としていることが、丁度「白黒」のコントラストとなっている。この7枚目の写真は土方の小ささがコミカルにも映っているし、また同時に土方の浮遊感、もしかしたらふっと飛び上がるのではないかという期待感も醸し出しているように思われる。8枚目以降は、闇の中で「鋭気」を養っているかのように、ギラギラと土方の眼が輝き始める。
10枚目以降の写真は、整理棚の中に正座して、体を折り曲げてながら入っている土方の写真であり、画面右半分はほぼ完全に黒と化している中で、土方の位置だけは異様なまでに光を放っている。
土方と子供の写真はなぜかよく似合う。16枚目以降、土方と子供たちの写真が並ぶのだが、特に着物を着た少女と土方の写真は美しい。18枚目の写真は覆い焼きなどの暗室作業の行なわれたことが明白なぐらいに目立っているのだが、それがかえって二人の空間の異質性(そこだけ温度が上昇しているような)を強調し、また二人の空間を隔離してもいる。