THE VOIDTHE VOID
石川 直樹

ニーハイメディア・ジャパン 2005-09
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石川直樹の写真集。鬱蒼と木々が生えている場所。植物が、動物を凌駕している場所。「読み」が通じない場所。いやその前に、私は「森」に入ったことがあるのだろうか。雑木林、山、野原には、何度か入った経験がある。しかし、森と言われると、少し悩んでしまう。自然の中で、森は一番遠い存在なのかもしれない。
森と山はどちらがより大きな概念なのだろうか。山の麓に広がる森は、山に付属するもの(山の延長としての森)なのか。それとも、森の中に山があるのか。日本では、山を崇める因習があるため、前者のイメージが強いように思われる(ただし沖縄には、御嶽という森信仰があるため、違うかもしれない。北海道はどうなのだろうか)。私自身も、前者のイメージのほうが強い。
しかし、一度後者の見方に立つと、全く違う姿が眼前に広がる。富士の樹海を考えてみよう。富士山が主となり、樹海が従となるのではなく、広大な樹海の中に富士山があるという風に考えると、樹海は富士を育てる母のように見えてくる。山の形は、仰向けになった身重の女性の腹部を連想させる。
富士の樹海とニュージーランドの森。場所は違えど、根元は一つなのかもしれない。それは形態のアナロジーを越えて、生成のエネルギーへと収束していく。この写真集の冒頭にある言葉に従って。
ONE FOREST IS ALL FORESTS.