新年最初の写真集批評は、松江泰治の「CC」。書誌情報は後日載せます。
小さい頃、東京都庁の展望台から見下ろした新宿の町並みに、とても興奮したことを覚えている。今でも、時々展望台にのぼっては、新宿という都市の変わりゆく景色を見ている。大人になった今、私の視線はどこに向うかというと、地平線へと自然に向かう。あまり真下を見ようとはしない。しかし、展望台にいる子供や、小さい頃の自分を思い出してみると、ガラスに顔を押しつけて、眼下にある町並みを一生懸命見ようとしている。
大人が真正面を見ようとするのに対し、子供は真下を見るのである。このことに思い至ったとき、はたと気が付いた。大人はなるべく、「遠近法」で、物事を見ようとするのではないか、と。子供は逆に、俯瞰図を見ようとしているのではないか、と。子供は高いから興奮しているのではなく、普段見慣れていない視界に興奮しているのではないだろうか。そして、その視界を存分に楽しもうと、あんなにも懸命にガラスに顔を押し当てて見ているのではないだろうか。松江泰治の写真は、そんなことを思い出させてくれる写真である。
俯瞰した光景、子供が興奮する光景、ナダールが見た光景、見慣れない光景。