「いもじな日々 ―日曜鋳物師の作業記録と雑感―」
7/11付けの記録で、未見のベルメールの写真を載せた
サイトを紹介していました。
サイトの前半にある"Hans Bellmer Unica 1954"の写真を
見ると、写真から、エッチングやデッサンに「肉体の重なり
合い」を求めて転向したという私の卒論での見方は再考の
必要があるかもしれません。ベルメールは写真集の序文に
おいて、写真にある種の魔術的効果を認めていました。し
かし、彼は人形の写真を撮影して以降、ウニカの緊縛写真
を撮影するまで写真からは遠ざかっていました。一方で、
写真の撮影を止めてから、エッチングやデッサンであの魅
惑的な肉体の折り重なる線の描写に更なる磨きがかかりま
す。そして、『イマージュの解剖学』の第二部において、
写真の限界を宣言します。しかし、1950年代に再びウニカ
の写真を撮影することになります。これを単なる記録写真
の類として、写真の限界を宣言したことと矛盾しないとい
う見方もあると思いますが、私はウニカの写真がただの記
録写真だとは思わないし、ベルメールに何かしらの矛盾し
た感情があるように思います。それが今回の写真で、この
問題に関して一つの重要な手がかりを与えてくれるのでは
ないかと。エッチングと写真の同居がベルメールの感情を
ストレートに表しているのかもしれません。