タイガー&ドラゴン 厩火事」。今回は、一見すると落語のほうがおざなりになっていたような印象を受けたような。あのエンディングを入れたことによって、ドラマ全体が一つの落語を構造化していた従来の特徴が破綻したような。しかし、別の見方をすると、オリジナルの落語では床屋の夫婦であったのが、今回は漫才師の夫婦になっているところがみそで、最後のオチの言葉「遊んでて酒が呑めねぇ!」が床屋の夫婦と漫才師の夫婦ではその意味合いを吟味しなくてはならない。というのも床屋の夫婦と違って、漫才師の夫婦は自分の気持ちはどうであれ、人を笑わせるオチを言わなくてはならない。だから、じろちょ・・・もとい漫才師の夫婦がどのような気持ちでオチの言葉を言ったかは(客席の人には)本来分からないのである。しかし、ドラマではその漫才師の気持ちにせまったわけで、エンディングにあのシーンをもってくることで、本来笑いでオチがつく「厩火事」が、漫才師の宿命(どんな状況であっても人を笑わせなければならない)を描いた、ほろ涙でオチがつく「厩火事」に劇的に変わったのである。そういった意味では、オリジナルの落語を見事に転換させていたように思う。ということは、最初に述べた「なおざり」というのも途中までオリジナルの「厩火事」に厳密に沿う必要からのもので、一つの戦略であったのか。
来週は「明烏」。あらましは以下のところで。
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