ヘルムート・ニュートンRSF写真集ヘルムート・ニュートンRSF写真集
ヘルムート ニュートン Helmut Newton

アシェット婦人画報社 2005-06
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ヘルムート・ニュートンの作品。国境なき記者団の企画・制作によるものである。2004年、自動車のアクセルとブレーキを踏み間違えて、壁に激突し、そのまま帰らぬ人となった。彼の死のあと、2004年中にジャック・デリダアンリ・カルティエ=ブレッソンスーザン・ソンタグと写真界に多大な影響を及ぼした人々が亡くなったのは一体何の因果であろうか。彼はヴォーグなどのファッション雑誌を主な活躍の場としており、誰もが一度は彼の写真を見たことがあるだろう。下着姿の女性が街中でたたずんでいる写真や、夜の街道で裸の女性と男装した女性が寄り添っている写真など、女性の肉体、服装、そして外界を強く意識していたことが分かる。ファッション写真というと、スタジオでの撮影が真っ先に連想するが、ヘルムート・ニュートンの写真で真っ先に思い出すのは街中での撮影であり、彼の写真がファッション界にあって(現在でも)稀有な存在であること、このことは強調してもよいだろう。
「街とファッション(モード)」という濃密な関係が、ニュートンの写真には随所に見られる。街に下着姿の女性がいるということによって違和感が生じるのは、街にファッションが完全に浸透しているからである。それをある種、逆説的に証明してみせたのがニュートンの写真なのである。しかし、また一方でその写真にエロティックさだけではなく美しさを感じるのは、そうした下着やボンテージファッションも一つのファッションとして見ることができるからでもある。こうした順接的効果と逆説的効果の二重性がニュートンの写真を輝かせている一つの大きな要素だと私は考えている。