Facebook 2012年12月16日より一部変更)

中村早『THE BOY』KULA、2012年9月
『THE BOY』(5分冊+林道郎のテクスト付きの小冊子型写真集)を見ながら、写真家たちによるこれまでの身体表現をあれこれ思う。細江英公は「おとこと女」シリーズ(1960年)以来ずっと「肉」(筋肉、肉感、肉体など)への関心を持ち続けているように思うし、石内都は「皮膚」に被写体の過ごした時間の層(年輪)を読み取ろうとしている(そして、表皮への意識はのちに被爆した衣服を撮ったシリーズや着物のシリーズへと受け継がれていく)。
『THE BOY』の第1冊目をみると、薄い皮膚の下、筋肉よりもさらに深層にある「骨格」に光が当てられているように思われる。ある写真では背を丸めることで背骨が浮き上がったり、逆に背を反らすことで背骨のある部分が陥没したりと、筋肉の隆起とも皮膚のテクスチュアとも違う骨の潜伏性が示されている。また、別の写真では肋骨がうっすら浮かび上がり、身体のうえで起伏を成し、シーツの皺もその起伏と重なり合っている。ほのかな光源と相まって、見えなさが見えなさのままに可視化されているよう。中村は細江とも石内とも異なる視点で、身体を見つめている。
他の4冊もそれぞれに違う要素が際立っていて、見ごたえがある。この写真集自体が、中村の作品をどう見ようかという際のガイダンスの役割を果たしているようにも思える。