今ハル・フォスターの著作の一章を訳しているのですが、
ベルメールの1937年のオブジェ「恩寵の状態にある機関銃」
というこのオブジェの題名は一般的というか日本語のカタ
ログにも載っているような正式な題名なのでしょうか。
ベルメールがこの題名を何語で書いたかは今ちょっと分から
ないのですが、手元にある英語の題名では"Machine-Gunneress
in a State of Grace"ということになっています。
Machine-Gunneressは機関銃という訳語が適当なのでしょうか。
GunneressはGunner(砲兵)の女性系名詞ではないでしょうか。
オブジェを見ても、女性のイマージュが投影されていますし。
そしてState of Graceの意味が「恩寵に浴する」というのも
Machine-Gunneressとどうつながるかよく分かりません。
このオブジェは銃口が曲がっており、狙うことが出来ないので、
「恩寵の状態にある」という意味は殺人という「大罪を犯して
いない」ということなのでしょうか(白水社仏和辞典(Le Dico)
にState of Graceの訳語として「大罪を犯していない」という
意味も載せている)。
あるいはStateに「延期、猶予」という意味があるので、
「猶予状態」とすれば、銃口のことともうまく符号するかと
思います。しかし、State of Graceは「恩寵に浴する」という
熟語で存在しているので、あまり法律的な用語である
「猶予」にはなじまないのかもしれません。
ちなみに「恩寵の状態にある機関銃」という邦題はBlaue Katze
さんのサイト(http://bluecat.web.infoseek.co.jp/bellmer/
で知りました。ネットで「恩寵の状態にある機関銃」を検索
しても、このサイトともう一つの個人ホームページしか
ヒットしませんでした。
P.S 今調べたところ、上記のオブジェのフランス語の題名は
"La Mitraileuse en Etat de Grace"で、"La Mitraileuse"は
「機関銃」という意味なので、前の題名で正しいみたいで
すね。なあんだ。女性名詞だから、機関銃を女性的なイマ
ージュで包んだのかな。ただ「恩寵に浴する」というのは
少し意味がとりにくいのはあると思います。
「恩寵の状態にある機関銃」の写真(http://www.zwirnerandwirth.com/exhibitions/2001/112001ProperMeaning/lamaitrailleuse.html