水木金と連続して、外国語文献の講読の授業があり、
更新が滞ってしまいました。最近気付いたことで、リ
ルケと押井守監督の「イノセンス」との接点を見つけ
たのですが、また今度書きます。
Jerrold Levinsonの"Defining art historically"の要約終
了。Å4で七枚にも及ぶので、できれば四枚くらいまで圧
縮したいとこ。今はDantoの"Artworld"の和訳をしています。
s-showさんに対するコメントですが、日記のほうに書いて
も構わないでしょうか。もし不都合でしたら、また後でち
ゃんと消しますので。

>そのゴルセンの主張は僕には形而上学的なように思われます。

ゴルセンはおそらく、ベルメールの作品の中に男性の肉体
トランスジェンダーを扱ったものがないという意味で言
ったんだと思います。彼の作品に則しての意見ですから、
形而上学的というわけでもないとは思うのですが、どうで
しょう。

>『ウニカ・チュルン遺稿集』ガレリア・アミカ──この
本、どんな内容か教えていただけませんか。

二冊組で、一冊は澁澤龍彦ベルメール論をすべてまとめ
たもの、もう一冊は前回お話に出た「ハンス・ベルメール
との出会い」を含めて、「ムフタール街88番地」、「ミス
テイク」、「メゾン・ブランシュでの休暇」、「小児読
本」でほぼウニカの最晩年に書かれた作品を集めたもので
す。「ハンス・ベルメール〜」には、結構ベルメールがど
んな人と会っていたのかが詳しく書かれていたので、参考
になります。あと「メゾン〜」以外はすべてベルメール
は関係ない詩であったり、小説みたいなものであったり。

>「(トランスジェンダーな)エロティシズムの恩寵」だ
と考えるのですが、いかがでしょうか。

この作品の題名がなぜ「機関銃」でなければならないの
か、ということにもっと注目しなければならないと私は思
います。WebbもFosterもこの作品の仏題と英題を全く変り
のないものとして見てしまっていますが、それは明らかに
誤りでしょう。
フランス語で機関銃は"La Mitrailleuse"ですが、これはLa
からも分かるように女性名詞です。一方、ドイツ語で機関
銃は"Maschinengewehr"ですが、これは中性名詞です。最後
に、英語で機関銃は"The Machine-gun"ですが、英語には男
性・女性系の名詞というものは存在しません。そこで機関
銃というものはそもそも男性的なイマージュであるのに、
なぜかフランス語では女性名詞であるということがベルメ
ールにとっては衝撃だったのかもしれません(ドイツ語で
は中性名詞なので)。
s-showさんの言葉を借りれて言えば、言葉(単語レベルに
おいて)の中に、トランスジェンダー的な要素があるとい
う視点は、言葉に非常に敏感なベルメールならではだと思
います。つまり、この作品の題名は翻訳不可能なのです。
s-showさんのおっしゃるように「エロティシズムの恩寵」
だとしたら、なぜ銃口は折れ曲がっているのでしょうか?
僕はまだこのgraceの意味を測りかねています。ただ、人間
の側にひきつけてよいものかどうかは一考する余地がある
と思います。これはあくまで機関銃という語をめぐる問題
であるかもしれないからです。貴重な意見・情報ありがと
うございます。Webbの本もざっとしか目を通してなくて、
そのような話があることが分かって非常に参考になります。