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『観察者の系譜 視覚空間の変容とモダニティ』
・作者: ジョナサン・クレーリー
・出版社/メーカー: 十月社
・発売日: 1997/11
著者は従来のカメラ・オブスキュラから写真機へと至る技術決定論的・進歩史観的な見方に疑問を呈し、カメラ・オブスキュラの時代(17、18世紀)と写真機の時代(19世紀)との間に、フーコー的断絶を描こうとしている。
17、18世紀……
・カメラ・オブスキュラ内部にいる主体と外部との実在的なつながり
・身体を捨象した超越論的視覚、他の感覚との統合
・観察者は見ることのみ
・カメラ・オブスキュラと人間の視覚の関係はメタファー
19世紀……(生理学の発達)
・外部と関係なく、主体内部において像を作り出す(残像、色彩変化等)
・身体の状態に左右される視覚、視覚の自律化
・観察者は視覚に関する実験対象でもある
・「スコープ」と人間の視覚の関係はメトノミー
上記のように、17、18世紀と19世紀との間には、視覚に関して大きな断絶がある。19世紀において、様々な「スコープ」が視覚の実験器具から玩具へと転用されており、そのスコープを見る主体は自身をその機構の中に組み込んでいる。それは人間の身体を道具と化し、労働の機構に自らを組み込む状況を述べたマルクスの議論と重なり合ってくる。